智子自身が別れを
切り出された男に、
すがって捨てられる
悲しみは痛い程
わかっている。

経験がプライドを
大きくさせる
年齢なのだ。

そして、。
新しい女が出来たと
はっきり言われ、
元には戻れないことも
わかっているのだ。

だったら、聞き分けのいい
女を演じですっきり別れ
「いい女だった」と
思われたいのだ。

聞き分けのいい女なんて
この世にはいない。

だた演じているだけなのだ。

「智子さ、毎日ここに来てるけど
他にすることないの?」

「それがさ、情けないくらい
ないのよ。今まで誠がいて
当たり前でさ、暇な時は
誠といたわけよ。それが、
いなくなて、何をしていいか
わからないの。それがまた
ムカつくっていうかさ、
情けないのよ」

「そっか」

「誰かといないと誠に
電話しそうだしね」

「それはダメだよ」

「分かってる。
だからここに来てるんじゃない」

智子は必死に我慢していた。

別れた男にすがりたくない。
だけど、淋しさのあまり
また連絡を取ってしまう。
そんな惨めな女には
なりたくないのだ。