最初の恋のお話は

坂口智子・30歳。
化粧品会社勤務。

智子には、3年付き合った
男がいた。

しかし、
半年前に突然別れを
告げられた。

男に新しい女が出来たのだ。
単純な理由だった。

7年という歳月を
たった2ヶ月前に現れた
女に簡単に奪われたのだ。

30女の屈辱だった。

智子は、仕事が終わると
国分寺市・恋ケ窪にある
喫茶店「ラバーズ」に
やって来る。

智子の友達・里美の
両親が遺した店だ。

ここに毎晩やって来ては
半べそをかきながら

「なんで、私があんな小娘に
誠を取られるの?
私が何か悪いことした?」

と愚痴っている。

「だったら、なんで別れるって
言っちゃたのよ」

「プライド」

智子の気持ちは分かる。

若い頃には、出来ていた
すがるという行動が
年齢と共に出来なくなるのだ。