神殿の最上階。
暗闇を湛える広間の最奥から一人の女が姿を現した。
女は俯きながら真っ直ぐに、広間から昇降機へ続く扉へと向かっていた。
その足取りは重い。
「えー、「銀狼(ぎんろう)」なんかがここに来るなんて珍しーい」
扉の方から声が聞こえて女は顔を上げた。
前からは、レースと花柄の生地をふんだんに使ったワンピースを纏った少女、玄姫が近付いてきていた。
仄かに広間を照らす蝋燭の灯りに、切り揃えられた淡い金色の髪が揺れる。
女はそれを認めると立ち止まり、静かに頭を垂れた。
玄姫は女に近付きながら話を続ける。
「ここはあんたみたいな格下が気軽に来て良いようなところじゃないのよ」
女は何も言わない。
「あんた達銀狼は、ただ命令されるがままに黄龍の反乱分子を潰す。それがお仕事でしょう?」
「……その命令を下す側から呼びつけられたのだ。変な言いがかりはやめていただきたい」
頭を上げた女は感情も現さず、淡々と言葉を返した。
少し枯れた涼しげな声にも表情がない。
「晶(あきら)が……?」
揚げ足を取るために声を掛けたはずの女の言葉に動揺したのは、玄姫の方だった。
暗闇を湛える広間の最奥から一人の女が姿を現した。
女は俯きながら真っ直ぐに、広間から昇降機へ続く扉へと向かっていた。
その足取りは重い。
「えー、「銀狼(ぎんろう)」なんかがここに来るなんて珍しーい」
扉の方から声が聞こえて女は顔を上げた。
前からは、レースと花柄の生地をふんだんに使ったワンピースを纏った少女、玄姫が近付いてきていた。
仄かに広間を照らす蝋燭の灯りに、切り揃えられた淡い金色の髪が揺れる。
女はそれを認めると立ち止まり、静かに頭を垂れた。
玄姫は女に近付きながら話を続ける。
「ここはあんたみたいな格下が気軽に来て良いようなところじゃないのよ」
女は何も言わない。
「あんた達銀狼は、ただ命令されるがままに黄龍の反乱分子を潰す。それがお仕事でしょう?」
「……その命令を下す側から呼びつけられたのだ。変な言いがかりはやめていただきたい」
頭を上げた女は感情も現さず、淡々と言葉を返した。
少し枯れた涼しげな声にも表情がない。
「晶(あきら)が……?」
揚げ足を取るために声を掛けたはずの女の言葉に動揺したのは、玄姫の方だった。