「それもそうなんだけど、
このままってわけにはいかねーだろ」


診察室、本来患者が座る回転式の椅子に腰掛けて、左右に揺れながら久遠は話す。

キィキィと軋む音が揺れる度に鳴る。


「でも、街の人達の目もあるし……」

「それに関しては俺、結構上手くやってるし、一緒にいれば問題ねーよ」

「やみくもに動いても効率悪いと思う……」

「ここに居続けるよりは状況が変わるとは思わねーの?」

「オカシイデス」


久遠と紗里の半ば強引な応酬に露暴が割って入った。


「何デ急ニソンナ事提案スルンデスカ?
ソンナニ押セ押セダト、端カラ聞イテルト久遠サンガ行キタクテゴネテルミタイニ聞コエマス」


露暴は二人に背を向けて、薬棚の在庫を調べていた。


久遠は黙り込む。
一度強く床を蹴って、椅子を一回転させた。
間の抜けた金属音がこすりだされる。


「……だって」


一回転して元の位置に戻ると、久遠は頬を膨らませてあからさまに不機嫌そうな顔をしていた。


「このままだと俺も外に出にくいんだもん!そろそろ自由に出入りしてーんだよ!!」