叶うならば、男は今すぐにでもここから逃げ出したい。そう思った。


監視の壁の継ぎ目。
黄龍の四方の要、四神護の塔。


内側に逃れれば、黄龍の民として絶対的な監視による支配から永久に抜け出せなくなる。
路地裏へ逃げれば、ここからそう離れることなく
監視の目の攻撃により命を落とす。

あるいは、この塔から脱出するまでに、控えている無数の傭兵達にそれを阻まれるか。


この場から動いても、その先には絶望しかない。

たやすく想像がついた。


それならば、
たとえ手柄がなくとも
四神護へ漂流者の情報を与えることによって、
せめて自分と後ろに控える仲間の命だけでも
見逃してもらえないだろうか。


その可能性にかけて男は留まった。


そもそも−−男は思う。


四神護を呼び立てた時点で覚悟をしておくべきだったのだ、と。