ダーク&ノイズ

佐々木の祝詞が粛々とあげられるなか、琢己は目をつむって祈りを捧げていた。

正直、自分の力が役に立つのかどうか分からない。

それでも、言われるがままに、祈りに神経を集中していた。


その琢己の肩にぽつりと落ちて濡らすものがある。


雨だろうか、と薄く開いたまぶたが、次の瞬間目を剥いた。


「うっ──!」


逆さまになった青黒い顔が眼前で琢己を見つめている。

地面に座る琢己の脇に立ち、その顔をのぞきこむように背を丸めていたのは、平家の亡霊だろうか、破れた鎧から血がしたたっていた。

喉もとまで叫びがせりあがる。


『声をあげてはいけない』


瞬間、佐々木の言葉が脳裏をかすめた。

それがなければ、この場で除霊は失敗しただろう。琢己は亡者から目をそらすように、そのまま地面に顔を伏せた。


その目の前の土が盛り上がってゆく。


驚愕する琢己の目の前で、盛り上がった土のかたまりが人の顔へと変化した。

長年の恨みと苦悩をためこんだ亡者は、大きく口を開くと、


「おおおお……」


と、低く地を震わす咆哮をあげた。