時折り、どこからか断末魔の叫びが響いてくる。

その声の主を想像するだけで、膝が小さくふるえた。


言葉を失った四人のなかで、佐々木だけは注意を呼びかけながら大股で歩いてゆく。三人は及び腰だが、それでも必死についていくしかない。

他の人々と違い、わずかに光をとらえることは出来ても、その光量はいかにも頼りなかった。

ついその道の先でさえ、三人には墨を塗ったような闇だ。

おそらく佐々木と離れれば、恐怖で一歩も動くことができないだろう。


その闇に突然赤い光が射し込んだ。

三人はいちように赤い月を確認すると、あまりの安堵に、その場にへたりこんでしまった。

「終わった……」

琢己は冷えた汗が首筋に流れるのを感じながら、ずいぶん長い息を吐いた。

それは悠美も恭一も同じだ。

極限まで緊張していた心臓が、思い出したように鼓動を開始した気がする。ようやく体があたたかみをとり戻した。

「休んでいる暇はないぞ」

が、ひと息つきたい三人を、佐々木は容赦なくせきたてる。

「はーい」

悠美たちは声をそろえて重い返事をすると、うんざりした顔でだるくなった腰をあげた。