ダーク&ノイズ

ついに刑事室に、一枚の看板が掲げられた。

『緊急事態特別対策本部』

となっている。


そこで宇野は、これまでの経緯を警視庁刑事課の刑事らに説明をしていた。

ひとしきり説明を終えたところで、内田が声をあげた。

「これまでの話で、質問はあるか」

メモを取っていた刑事らは次々と手をあげる。無理もない、信じられないことだらけと言うしかない。

「その藁人形を回収してみるのが最優先だと思いますが。どうしてそれをやらないんですか」

若い刑事だ。その口調には、所轄署員を見下すような色を含んでいた。


(だから察庁の連中は……)


宇野の横に座っている小金井は、苦い表情を見せて発言した。

「それについては、福田巡査長より説明を」

呼ばれて、最後尾の席に座っていた福田が前に出てくる。


その福田は、ズラリとならんだ警視庁のエリート刑事たちを目の前にして、つばを飲み込んだ。

果たして、あのような出来事をこの場で発言しても良いものだろうか。


だが、それを見透かしたように、内田がうながした。

「出来ればそのままの状況を伝えてください」

警視正という立場にしては柔軟な考えを持っている、と、福田は少し胸のうちが軽くなった。

「わかりました──」


それから事件のあらましが報告されたが、話を聞き終えた刑事らはいちように不満の顔を見せていた。

「熊か何かでしょう」
「大蛇ということは、ないか」
「たとえ何かがいてもですね、人数を出せばどうとでもなる問題でしょう」
「いっそ木を切り倒すというのはどうですか?」

福田はその危険性を強調したが、結局半分の捜査員を動員して、藁人形を撤去するということになった。

その藁人形に書かれた名前の人間が、殺人事件を起こしている可能性が高いのだ。