その男子中学生は、ほかの同級生らより少しだけ女生徒に人気があったに過ぎないし、あるサラリーマンは、妻が浮気に気づいていることすら知らない。
また、ある女生徒は最近付き合いだした彼氏が、前の彼女をふったばかりだった事を知らなかったし、その教師は、どれほど生徒らに嫌われているかの自覚はなかった。
だが、明確に自分を呪っている相手を洞察できる人間のほうが大多数を占めていた。
(あんな奴に呪われて死ぬくらいなら)
多くの人間の殺意が、渦を巻いて立ち昇る。
それは邪念をこめた生霊と言い換えてもよい。
霊感の強い人間がこの街にいれば、その波動を受けただけで精神に障害を起こすほど強力なものだった。
その邪念を詰め込んだ想念が空に渦巻くのを見て、その少女は薄ら笑いを浮かべた。
とは言っても、口元はマスクに覆われていて、わずかに目じりがしぼんだくらいしか外見からは判断できない。
その少女の目の前で、ホスト風の男が女を刺していた。
「分かってんだよ、お前が俺を呪ったんだろ」
ひと気のない繁華街の路地裏での出来事だ。
男は腹部を貫いていたバタフライナイフを引き抜くと、今度はそれを違うことなく心臓に突きたてた。
「なん……で」
それがその女の最後の言葉だった。
どっと噴き出す血しぶきを浴びて、男はむしろほっとしたような顔を見せていた。
だが、何故かかたわらにいるマスク姿の女には気づいていない。
夏の空に、赤い霧がさっと舞ったようだ。
その細やかな霧を浴びて、男は満足したようにその場を立ち去った。
また、ある女生徒は最近付き合いだした彼氏が、前の彼女をふったばかりだった事を知らなかったし、その教師は、どれほど生徒らに嫌われているかの自覚はなかった。
だが、明確に自分を呪っている相手を洞察できる人間のほうが大多数を占めていた。
(あんな奴に呪われて死ぬくらいなら)
多くの人間の殺意が、渦を巻いて立ち昇る。
それは邪念をこめた生霊と言い換えてもよい。
霊感の強い人間がこの街にいれば、その波動を受けただけで精神に障害を起こすほど強力なものだった。
その邪念を詰め込んだ想念が空に渦巻くのを見て、その少女は薄ら笑いを浮かべた。
とは言っても、口元はマスクに覆われていて、わずかに目じりがしぼんだくらいしか外見からは判断できない。
その少女の目の前で、ホスト風の男が女を刺していた。
「分かってんだよ、お前が俺を呪ったんだろ」
ひと気のない繁華街の路地裏での出来事だ。
男は腹部を貫いていたバタフライナイフを引き抜くと、今度はそれを違うことなく心臓に突きたてた。
「なん……で」
それがその女の最後の言葉だった。
どっと噴き出す血しぶきを浴びて、男はむしろほっとしたような顔を見せていた。
だが、何故かかたわらにいるマスク姿の女には気づいていない。
夏の空に、赤い霧がさっと舞ったようだ。
その細やかな霧を浴びて、男は満足したようにその場を立ち去った。



