仲間とはなんだろうか。


互いが互いを守ってくれる存在であるはずなのに、悠美たちは確かに、互いに傷付けられないようにだけ気遣っていたような気がする。


話を聞きながら準備に余念がなかった佐々木が、ようやく体を壇から離した。

「信頼とは認め合うことだ。決して、考えを同じにすることではない」

悠美は、はっと頭をあげた。

「善悪を考えず、相手が言うことに一緒になってうなずき、笑い、行動をともにする。それは単に相手に同調しているだけだ。和するということを忘れている」

「和するって、どういうことですか」

悠美は、素直にそれを聞いた。

「善悪を正した上で、自分と相手の意見や考えの違いを尊重し、互いに認め合ってなごむ。それを和すという。そして世界が和して平らかになることを平和という」


佐々木の話は正論だといえる。

しかし、それを貫くためには、人間的な強さが必要になってくる。


いま周りを見渡して、そんな人間がどれだけいるだろう。同調するか、反発するか、その二択しか答えが残されていない世の中になっている気がする。


琢己は、悠美と佐々木のやり取りを聞きながら、ふいにそんな事を考えていた。


「今回の呪いの被害の広がり方は、私の想像を超えるものだ。それは、この国は安全ではあるが、平和ではないということだ」

どれだけの人間が憎しみや妬みを抱え、他人の命を軽く見ているのか。それを如実にあらわすことになった。


「谷川さん。君はいま、木下裕子さんに言いたいことはありますか」

まっすぐに悠美を見つめる佐々木の目が、初めて優しさを見せていた。