なんの疑いもなくその電話を取ろうとしたとき、佐々木がするどい声を上げた。

「取るな!」

「え?」

「電波を使う気だ」

「電波って、なにが……」

「霊波を防ぐ禁を破るために、電波に呪いを乗せているということだ」

恭一がその言葉を聞いて顔色を変えた。

「そんな近代的な方法をどうしてお凛が」

「それは分からない。が、可能性があるとすれば──」

携帯から鳴りつづける着信音を断つべく、琢己が電源を切ってフリップを閉じる。

「この時代に順応したか、誰かが、お凛に憑りつかれたということもある」

「じゃあ、この携帯を拾った人間が……」

恭一なりに推理を働かせていると、琢己が口を開いた。

「悠美、最後に携帯を使ったのはいつだ」

悠美は記憶をたどった。


最後に使ったのは忘れもしない。真知子の携帯から、木下裕子がイタズラ電話をかけてきたときだ。

「最後にのぞみが携帯を手に取って、それから──」


それから悠美はその場から逃げたのだ。のぞみはその携帯をどうしたのだろうか?

「そこにいたのは誰だよ」

恭一が急かすように悠美に迫る。

「のぞみと沙理奈と、それから……木下裕子」


「木下ぁ!?」


琢己と恭一が同時に声をあげた。