「谷川さん、私はお金を要求はしません。しかし、代わりに悠美さんには少し協力してもらわなければなりません」

「協力って、うちの娘に何を」

「協力するかどうかは、悠美さんの返事で決めて良いですか?」

母親が不安げなまなざしを娘に向けると、悠美は

「はい、協力します」

と、しっかりと返事をした。


佐々木は珍しく笑みを浮かべると、母親に

「では、しばらく退室していただけますか?」

と言い、手のひらをドアへと向けた。



宇野は、朝から何度も沙理奈がいる部屋へと足を運んでいた。

この事件の全貌をとらえようと、彼なりに必死になっていたが、目に見えている殺人事件の取調べやマスコミへの対応に追われ、なかなか時間が取れないでいた。

少しでも席を外すと、すぐに署長からの呼び出しがかかる。

そのたびに舌打ちをして、その部屋をあとにしていた。


それでもようやく、この事件の流れをつかむほどには話を聞くことができた。


「お凛の呪いか……」