川の近くまでくると、佐々木の歩調が速まった。

「こっちだ」

河川敷に降りる道を駆け下る。


三人は静まり返った川のそばに、けたたましい足音を響かせた。

「まずいな、川に落ちてるようだ。恭一、先に救急車を呼びなさい」

「え、だって、まだ見つかってないですよ」

「見つけてからじゃ遅い。早くしなさい!」

言うなり、川に膝まで入った佐々木は、手のひらを水面につけて呪文を唱えた──



そして悠美は佐々木に助けられ、さらにその後、お凛に連れて行かれるところを防いでもらい、いまここで生きながらえている。

恭一の頭には、そもそもこの騒動の原因をつくったのは悠美本人だという引っ掛かりがある。

佐々木はその悠美をも助け、さらにこの街に広がろうとしている呪いの暴走をとめようとしているのだ。


それは金のためではもちろん、ない。


自身を鍛えに鍛え、そして身につけた呪術を人々のために使おうとする無償の奉仕の姿がそこにはある。

それにも関わらず、下種な霊感商法などと一緒にされたことは我慢がならなかった。


「だいたい、事の始まりはそこの──」

「恭一!」

佐々木の鋭い目が、恭一を抑えた。

「君が言う必要はない」

そう言われると、恭一は引き下がるしかない。