脚勢をゆるめた悠美はそのまま押し倒された。

腕をとられたまま不安定にアスファルトに叩きつけられると、肩と額に熱い痛みが走った。

「てめえ、どういうつもりだよ!」

のぞみは悠美を見下ろして恫喝した。

今まで友人だと思ってきたのに裏切られたのだ。

つい先日は悠美のためにアルバイトをして高価なプレゼントまで贈った。

それがこんな形で返ってきたのだ。怒りで血液が沸騰していた。

「ダチじゃなかったのかよ!」

だが、怒りとともに、別な感情がこみ上げてくるのも確かだった。

不意に、その感情がのぞみの瞳からあふれた。

「なんでだよ!」

熱いしずくが悠美の頬に落ちたとき、このときが誤解をとく唯一の機会だったといえるだろう。

しかし、悠美を見下ろしていたのぞみの視界が、そのとき暗く閉ざされた。




コオーン……



(来た!)



三人の血が凍る。


見えざるなにかがざわざわとうごめき始めたのだ。