想像はつかない。

が、それが恐ろしいものであると、進藤は直感した。


(逃げたほうが……いい)


しかし、それでは川田を見捨てることになる。


ここにいなければ、恐らく外だ。懐中電灯を外に出すと、すばやく周囲へ光を走らせた。


ズ……


その進藤の背後で、微かな音がした。

懐中電灯を振り回していた手が止まる。


ズズ……


(なにか……いる)


全身から冷えた汗がふき出した。

膝に力が入らない。恐怖に屈したようにただ震えるだけだ。

汗ですべる拳銃を握りなおすと、意を決して振り向いた。



夜の山あいに、乾いた発砲音が二度ほど鳴り響いたという。

だが、それを聞いたものは、だれひとりとしていなかった。