息苦しくて目が覚めた。



窓の外に目をやると、開いたままのカーテンの向こうには

薄暗いブルーグレーの空に、今にも消えそうな月がポツンと浮かんでいた。



普段は車が多く行き交う窓の下の道路も、今は物音ひとつしない。

ときどきカラスの声が聞こえるだけだ。




額に手をあてると汗でぐっしょりと濡れていた。

時計の針は午前5時を指している。




どんな夢を見ていたのか、ついさっきのことなのに思い出せない。

ただとにかく悲しくて、泣き叫んでいた記憶がある。




無性に泣きたくなった。

布団に潜って声を殺して泣いてみた。

理由もわからないのに・・とにかく泣きたくなったのだ。




着ていたTシャツの袖で涙を拭いてベッドから這い出た。



キッチンに行ってコップに水道の水を汲んで喉を鳴らしながら飲んだ。



生ぬるい感触が喉を通り抜けるにつれて、現実へと押し戻されて行く。




ベッドに戻って枕元の携帯電話を手にとってみる。



「やっぱり・・・」



真治からのメールは今日も来なかった。

これでもう20日も連絡が無かったことになる。




待ちわびているわけじゃない。

ただ、忘れられていることが悔しいのだ。



そう思うことで少しでも惨めな気分から逃れたかった。




もう、このまま何日もメールを待ちながら時間が過ぎて行くのは耐えられない。

いっそのこと受信拒否してやろうかとさえ思ったこともある。



でもそれができない自分が歯がゆい。




祥子は隣で寝ている夫を起こさないように音をたてずに携帯を閉じた。



目覚まし時計が鳴るまではあと2時間ある。

もう少し寝ておこう。

憂鬱な気持ちを胸に、祥子は再び夢へと堕ちて行った。






つづく