薄暗い、けれども暖かな部屋にその花は咲いていた




花は白い陶器の鉢に一輪だけ植えられていたが

水を与える者はたまにやってくる主しかいなかった



それでも部屋は湿度が高く、鉢の中の土は乾くことがなかったので

花はしおれてしまうことはなかった




木製の古びた窓枠に塗られた白いペンキはところどころ剥げかけている

その窓枠にはめられたガラスは厚ぼったく、四隅が汚れて曇っていた



半分ほど開けられたその窓は、どうやらその部屋の主が閉め忘れたものらしかった





部屋には頻繁に誰か訪ねて来るでもなく

閉め忘れたままの窓からは時々、小鳥や小さな虫たちが出入りしていた



花は汚れた窓ガラスの外の変わらない景色を毎日恨めしげに眺めていた




そんな日々が永遠に続くかと感じていたある夏の終わり・・・