「忍……助けて……」

え……

「辛いんだ……人を斬るのも殺めるのも……霧草宴なんて消えてしまえばいいんだ。」

目の前をなんの曇りも無く、只ひたすら歩んでいた椿は、しゃがみこみ、泣き倒れた。

「つば……」

椿に駆け寄ろうとした瞬間、周りの風景が歪みだし、崩れだす。

「椿ーーーー!」

私は精一杯椿に手を伸ばした。

けどね、届かなかったんだ。






「つ……ばき」

「速かったなぁ、霧草殿。」

除き込んで来たのはクリクリした瞳の少女。

曼陀羅だ。

「鎖葉斗も戻って来ていないのにのぉ。一番じゃよ。」

のんびりお茶を飲む曼陀羅。

駄菓子店の茶室に戻ってきたみたいだ。

「椿は何を求めてるの……

解らない……私には解らないよ曼陀羅……」

私の問いに曼陀羅は首を横に振る。

一杯お茶を飲むと、口を開いた。

「彼奴の求めてるもの、それは自分の居所じゃろう。」

居所……

椿は霧草宴の当主だった。

皆から慕われ、人望に溢れていた。

私は少なくても、あそこが私たちの居場所だと思ってたのに。

椿は違ったの……?

「哀しいのはわかる。

だが嘆く前にやる事があるじゃろう。

泣いていいのは全てを成し遂げた時じゃ。」

「……うん。」




私たちは、太陽の下。

此処の蒼月は静か。

あなたは星屑の涙。