銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

「……神灯には逆らえねぇなぁ。やめようや椿。」

頭をボリボリ掻くと、裡音こと独楽は目を瞑り、
近くにあった椅子によっかかり眠り始めた。

「な、逃げるな独楽!」

椿はまだ独楽を睨みつけ、まるで狼の様に威嚇している。

「それに、もし俺が椿を殺しちゃったら、式部に恨まれるかもしれないしねぇ。」

さりげなくボソッと呟いた独楽 裡音、No.6 森羅の称号をもつ男、
やはり只者ではないらしい。

此の一言で神灯の言葉にすら反応を示さなかった椿だが、黙ってしまった。

「式部って、どんな方ですのぉ?

わたくし、お会いしたことがないんですのぉ…」

茶亜夢は傘をくるくる回しながら神灯に聞いた。

「しょうがないよ。茶亜夢は最近支配下に入ったばかりだしね。

其れに式部は大抵姿を出さない。

姿を出す時といえば椿が出席する会議や任務くらいだね。」

仮面の下から発せられる神の声に、
万華鏡一の建造物・望鏡(ぼうきょう)は震え揺れる。

「ほにゅぅ?

もしかして椿のガールフレンドですの?」

訳の解らない言葉にならない言葉を発する茶亜夢。

しかもガールフレンドと、今のご時世にはありえない単語を。