「……お母さん、お父さん、いってきます。」

少女は家の仏間に飾ってある、亡き母と父の遺影に手を合わせると、
青いリュックサックをしょい、家を後にした。

彼の服装は紺のジーンズに、薄いオレンジ色のTシャツといった
いたってシンプルな服装。

少し伸びた黒い髪をツインテールにしている。

そんな彼女の横を通り過ぎる親子たち。

今日は日曜日、家族ずれでこの世臨街一番の、
世臨公園でピクニックをする人が多かった。

此の少女は白江 美紗。

美紗は今日、長年暮らした此の街から出て行こうとしていた。

其れは一昨日……






「……時間が本当に無いんだね。」

美紗は笑った。

間口はわなわなと震えだすと、美紗の両肩を掴んで怒鳴る程までは行かないが
少し大きな声で言った。

「何笑ってんだよ……冗談じゃねーぞ。

偶々手に入れちまった能力のせいで死ぬんだぞ?

其の前代の支配者の身勝手な欲望で、お前は――」

美紗は間口の口に人差し指を当てた。

間口は突然の出来事にめちゃくちゃ赤面になった。

そして美紗はまた笑った。

「あんただって笑ったじゃん。

自分が半妖だって知ったとき。

いいんだ。あたしのつまらない日常に割り込んできた時間制限。

だったら打ち負かしてやる。」