銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

『香……』

『独楽くん……

今は赤月さんの処置の方が大切でしょう!?

何時もの独楽くんは何処に行ったのよ!

何で…… 冷静になれないのよ…・・・』

独楽は七瀬の一言を引き金に、やっと事の重大さに気づき、愕然とした。

万里はまだ死んでいなかったかもしれないのに。

彼の崩落し始めた心。

現実と思い込みの識別が利かなくなり始める。

『あ……ああ…… 俺が万里を殺したんだ。』

『!! 何言ってるの!?

ねえ…… 独楽くん……』

躰の至る所の感覚が麻痺し、思考も凍り始める。

其のまま、独楽はゆっくりと睡魔に襲われ、意識を失った。

上から下に紙が落ちるみたいに、彼は床に倒れ込んで行った。






『先ず……』

息を呑み、彼の話を私は聞いた。

戦闘の時以上に、私は神経を集中させていただろう。

『キャルナスがギラテクト移行魔法で、赤月さんにギラテクトを送る。

けど、きっと独楽……は、其の間に来てしまう。

だから、僕と赤月さんで戦う。

後は、変換して混合するから。』

私と鎖葉斗くんで、戦う……?

変換? 混合?

未だピンと来ない私と違って、キャルナスさんと新人さんは解ったみたいだった。

表情を晴れやかにし、感心の面持ちで鎖葉斗君を見ていた。

そんな私に気づいたのか、新人さんがそっと耳打ちしてくれた。

『死に近づく、死界に近づく、ギラテクトが増える。』

……やっと意味が解った。

傷が増え、躰が崩れ逝くに連れて、死界へ近づく。

私達が取ろうとしている方法は、私の肉体を腐らせないで死界に逝く方法。

テクトとギラテクト。

更に分類すると、身のテクト、心のテクト、身のギラテクト、心のギラテクト。

簡単に説明すると、身のギラテクトが多ければ、躰が終わりを告げる。

つまり、人の言う主な死は此れだ。

心のギラテクトが多ければ……

躰は朽ちなくても、中身が無い。

寝たきりで生の世界と死の世界を彷徨っている人間は此れに値する。