銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

白い床に、新たな鎖葉斗の血が流れ出す。

テクトが少なくなったせいか、躰に思うように力が入らず、鎖葉斗は倒れ込む。

『口ほどにもねーなー……

相棒が抜け殻じゃねーか。』

ゆっくりと鎖葉斗の方に歩み寄ると、独楽は鎖葉斗の喉に狐詩姫を突き付ける。

『終いにするか?』

虚ろな目で自分を見る独楽。

其の光を失った目の縁から涙が流れる。

人は人が死ぬと、そこまで怒ったり、激したり、哀しんだりするのか?

『何で君はそんなに怒ったり、泣いたりするの?』

鎖葉斗の問いに、独楽の目は虚ろから、自分への哀れみの眼差しに変わった事に気付いた。

『当たり前だろう?

何故、解らない?』



解ラナイ……

自分ハ何モ知ラナイ……



彼は人並みの感情が無いのだ。

『だって、おかしいだろ。

何で他人の為に泣いたり、怒ったりする?

人間は自分が一番、可愛いんだろ?』

此は断言出来る筈だ。

爾来に会って、身を持って知ったんだ。

『確かに人は、自分の身が可愛くてしょうがない。

自分を最優先にして、身勝手な理由で他人を傷付ける。』

そうだろう?

人は醜いんだ。

『違う。 人は変われる。

意志が有る。


醜い人間と人間が集まったからって、更に醜くなるだけとは限らない。

人は自ら変わろうと云う意志さえ有れば、何だって出来る、変われるんだ!

俺は万里のお陰で、変われたんだ。

万里は俺に、本当の俺をくれた、自分以上に大切な人だった。』

赤月 万里。

彼女は人を変える。

自分も彼女に感化され、変わりつつ有る事に鎖葉斗は気付いていなかった。

『独楽くん!』

後ろから声がする。

紫紺の髪を後ろで束ねた美女……

七瀬 香だ。