銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

『お前かよ。

お前が、万里をこんな目に合わせたのかよ!』

独楽の鋭い怒声に顔色一つ変えず、少年……鎖葉斗はくすくすと笑い続ける。

『うん、そうだけど。』

短く鎖葉斗は言い切る。

独楽の額の血筋が浮き出つのが感じ取れる。

彼の本気の気迫が伝わったのか、少し不味いと思い、鎖葉斗は一歩後退った。

『抉り尽くせ

孤高の焔を宿りし姫よ

時は来た

災厄の鐘を鳴らせ

狐鐘姫(こどうひめ)』

天使は回復武器や魔術に優れた才能を持つ。

昔は此の力で宇宙の万物達、全てを癒やしてきた。

然し、とある天使は其の考えを否定した。


“天使も戦わねばならない”


天使の回復の力はテクト増加の力。

此を逆に使う……

ギラテクトを増加させる。

ギラテクトが増加する、テクトが減少、最終的には死界への強制送還。

死界への強制送還、言い方を変えれば其れは死を意味する。

『翼の生えた槍……』

彼の手の内に現れた、灰色の槍。

其の矛先の少し下辺りから、薄く柔らかい、白の光を纏った、透明色の翼が生えていた。

一時は見る者に安らぎを与える翼だが、次第に何か底知れぬ恐怖を感じさせる。

『天魔壱式────』

独楽は槍を鎖葉斗に向け、息を深く吸った。

天魔はテクト減少魔法を武器に宿す、天界特有の魔器。

其の矛先が掠るだけで、テクトは消え、ギラテクトが増してゆくと云う、恐ろしい魔術。

だが、そんな大魔術を身に付けられるのは、一握りの天使のみ。

大貴族・独楽家をの家名を継ぎし彼は、此の魔術を使う為の知識と権利を持っている。

『!!』

鎖葉斗はさらに二、三歩後退る。

赦雨薇唖が砕け散り、未だ修復出来ていないのだ。

此の只の鎌と化した赦雨薇唖で対峙せねばならない。

『龍峰斬(りゅうほうざん)』

居合いの形に構え、其のまま俊足で鎖葉斗の元に移動し、狐詩姫で彼の腹部に激しい突きと横切りをした。

抜け殻の赦雨薇唖では、やはり駄目だった。

強く放り投げ出され、壁にぶつかった。