銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

『ちょっと待ってよ!

あ、あのさ……

赤月さんは死んだ事にされちゃうんでしょ?

独楽くんが……哀しむ……』

!! そうだ……

りっくん……

私が死んだらりっくんはどうするかな……

哀しむ……かな……

『あの人だったら、鎖葉斗君に復讐何てやりかねない。

止めてよ……

死界に行かないで……

其れか、独楽くんに教えてあげてよ。

死界に行くって……』

『駄目だと思いますよー。』

拍子抜けした声でキャルナスさんが反論する。

たじろぎながら、新人さんがキャルナスさんに視線を向けた。

『彼の立場は私達の立場とは違うんですよ?』

りっくんの立場……

りっくんは六歳で大病にかかって亡くなってから、死界に行って、天使に転生出来たって言ってた。

天界に来てからは、天使の中でも上級階級貴族の独楽の家に養子に迎えられて……

支配下に入れば更に、鏡界の上級階級の人達との交流が盛んになる。

独楽の家の繁栄の為に、七歳の頃には鏡界の支配下育成学院に入学させられた。

其処で私と知り合ったんだよね。

『本来、テクトを魔術で増やしたり、減らしたりするのは堅く禁じられてるんですよ。

独楽が其の事を知ってて黙ってたなんてバレてしまったら、彼は家から追放されてしまうでしょうね。』

りっくんが……追放?

絶対駄目だよ、そんなの。

今まで弱音一つ吐かずに、独楽の家の為だって勉強して、したくもない人殺しもやって……

私にはとてもそんな独楽くんに協力は頼めなかった。

『じゃあ私は嫌でも貴女を止める!』

新人さんは手に銀箔のグローブを填めると、私に襲いかかってきた。


ダンッ


地面を蹴る音と共に、さっきまで新人さんが居た場所は蛻の殻。

反転し、後ろに振り返る。

風を斬る微かな音、力を籠める時の強い息遣いが聞こえた。