銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

え?

さっき私がキャルナスさんに投げたナイフが飛んでくる。

私の頬を掠ると、ぐさっと鈍い音を立てた。

『痛ああ』

断末魔の様な叫びが四十九番地に響き渡る。

ふらふらとナイフの標的が倒れた。

『あ、新人さん。』

見覚えの有る可愛い顔。

そう、望郷の前で逢った新人さんだった。

『ひぐぅううー。

赤月め…… 独楽くんの心を意のままにして、然も殺そうとするなんて……

私に何の恨みが有るのよー。』

独楽……?

りっくんがどうしたの?

『複雑な四角関係何だね。』

『ですねー』

また二人はにやけながら話してるし。

『痛ぁぁぁああ』

新人さんはナイフが刺さった右肩を抱えて唸ってるし。

何か此の人の登場で空気が一転した。

『いやいやすみません。

まぁ盗み聞きしたのは貴女何ですから。』

此の人は鬼だ。

彼は新人さんに近寄ると、ナイフを勢い良く抜いて回収した。

血が毒々しく肩から流れる。

『ぎゃぁぁああ』

『安心して下さい。

加減は心得てますから。』

傷は言葉の通り浅い。

深ければ抜いた瞬間に、血の噴水になってただろうから。

だけどかなり痛そうだ……

『盗み聞き……最低行為?』

鎖葉斗君は軽く首を傾げながら、目配せする。

『ちっ、違う!

入るタイミングが解らなかっただけ!』

焦りながら新人さんが反論した。

此の焦りよう、嘘じゃないんだろう。

『ね、ねぇ……

貴方達、侵入者をどうするの!?

逃がしちゃったりしたら、怒られるよっ!』

怒られる所じゃ済まないだろうね。

だけど、鎖葉斗君を爾来様に差し出す事は出来ないよ。

『今、皆が赤月さんと侵入者を探し回ってる。

此処に他の支配下が来るのは時間の問題だって!』

わたわたと、新人さんは慌てふためく。

『万里。』

『赤月さん……』

三人の視線が私に集まる。

あーもう!

しょうがない。

私が鎖葉斗君と爾来様の為にしてあげられる、精一杯の行動は此だ。