そんな僕に出来た瞬間的な隙を、爾来は逃さなかった。
剥き出しにしたナイフで腹を刺した後に、僕から支配力を抜き出し、死界に堕とした。
爾来は僕の代わりに其の戦いで功績を修め、支配者に就任。
対する僕は、死界に堕とされた後……
実験施設に連れて行かれて、地獄の様な日々を送る。
記憶を無くして、力を無くして。
『爾来……っ!』
怒りに心を支配され、機械的に目の前の愚弟の胸倉を掴んだ。
僕より頭一つ分背の高い彼は僕を見下し、悠然と立っている。
『ばいばい、兄さん』
『なっ!?』
目の前が真っ暗になった。
最後に声が聞こえた。
『兄さんは、絶望していればいいさ。
忘れてしまいなよ……
みんなみんな。』
僕は僕が解らない。
爾来はああ言うけれど、誰も僕を見つけてくれないんだ。
そんな優秀な支配人だったなら、僕を見つけてくれる人はいてくれる筈だ。
黒無化 まこ。
彼女何て、ここ、五十年は支配下に就いている。
なのに、何故僕を知らない?
やはり僕は爾来の言う僕とは違うんではないか?
曇りがかった不安感が脳内を研ぎ澄ます。
「ねえ……
僕だよね? 貴方は僕だよね?」
僕は目を瞑る青年に呼び掛ける。
青年は唸り、身を翻す。
彼の喉元を縛っている黒い薔薇。
此が原因か……
「待ってて、助けるから」
何か武器になる物は無いかと、ポケットを探る。
だが生憎……
何も無かった。
独楽に取り上げられたのだった。
赦雨薇唖もいない。
シュ……
「!」
光が上から降り注ぐ。
此の世界が終わる。
「また、また来るから。
それまで、それまで死なないでね?」
“ボク”の手を握り締め、僕は元の世界へ目を覚ました。
鳥の囀りが聞こえる。
朝日が室内を照らし込めた。
まださっきの世界にいる気がしてならない。
ボクは今頃どうしただろう?
生きているだろうか?
黒薔薇に負けていないだろうか?
そんな事ばかり考えてしまう。
剥き出しにしたナイフで腹を刺した後に、僕から支配力を抜き出し、死界に堕とした。
爾来は僕の代わりに其の戦いで功績を修め、支配者に就任。
対する僕は、死界に堕とされた後……
実験施設に連れて行かれて、地獄の様な日々を送る。
記憶を無くして、力を無くして。
『爾来……っ!』
怒りに心を支配され、機械的に目の前の愚弟の胸倉を掴んだ。
僕より頭一つ分背の高い彼は僕を見下し、悠然と立っている。
『ばいばい、兄さん』
『なっ!?』
目の前が真っ暗になった。
最後に声が聞こえた。
『兄さんは、絶望していればいいさ。
忘れてしまいなよ……
みんなみんな。』
僕は僕が解らない。
爾来はああ言うけれど、誰も僕を見つけてくれないんだ。
そんな優秀な支配人だったなら、僕を見つけてくれる人はいてくれる筈だ。
黒無化 まこ。
彼女何て、ここ、五十年は支配下に就いている。
なのに、何故僕を知らない?
やはり僕は爾来の言う僕とは違うんではないか?
曇りがかった不安感が脳内を研ぎ澄ます。
「ねえ……
僕だよね? 貴方は僕だよね?」
僕は目を瞑る青年に呼び掛ける。
青年は唸り、身を翻す。
彼の喉元を縛っている黒い薔薇。
此が原因か……
「待ってて、助けるから」
何か武器になる物は無いかと、ポケットを探る。
だが生憎……
何も無かった。
独楽に取り上げられたのだった。
赦雨薇唖もいない。
シュ……
「!」
光が上から降り注ぐ。
此の世界が終わる。
「また、また来るから。
それまで、それまで死なないでね?」
“ボク”の手を握り締め、僕は元の世界へ目を覚ました。
鳥の囀りが聞こえる。
朝日が室内を照らし込めた。
まださっきの世界にいる気がしてならない。
ボクは今頃どうしただろう?
生きているだろうか?
黒薔薇に負けていないだろうか?
そんな事ばかり考えてしまう。


