銀鏡神話‐翡翠の羽根‐

哀歌の終曲────




「赤月。 君は今、どうしてるの?

僕を……見つけられたの?」

窓辺に寄りかかりながら、鎖葉斗は夜の空を見た。

二日目の晩。

明日は独楽と戦わなければならない。

(出来たら戦いたくないな。

赤月に独楽の事任されたし。)

理由を説明したいけど、今は其の時じゃないから。

「赦雨薇唖」

《なんだぁぁああ?》

アスファルトの壁に耳を付けた。

隣の部屋に閉じ込められている赦雨薇唖の声が聞こえる。

「僕って、誰何だろうね?

何時から僕は白露 鎖葉斗に成ったんだろう。」

暫く赦雨薇唖から返事が無かった。

てっきり無視されたかと思ったけど、数分後に返事がきた。

《俺が知ってる限りじゃぁぁああ、やっぱり“リアノ”に逢った頃からぁぁああ、お前は白露 鎖葉斗に成ったんじゃねーかぁぁああ?》

リアノ。

僕を実験施設から連れ出してくれた恩人。

黒いヴェールに顔を包んだ、黒髪の女だった。

彼女がと交わした言葉は数えられるくらいの物だった。






『貴方は普通じゃないの、D-R57。』

『普通じゃないの?』

『ええ、貴方には魔王の血が流れてる。』

『僕が――――?』

『えぇ。そこで世界をちょっと壊してみない?』






此だけの物。

お陰様で僕は自由有る外の世界に出られたけど、其れからはリアノにとって僕はお払い箱。

何たって僕には魔王の血なんか流れてないから。

魔王の歴史を調べたら、魔王の子孫ははっきりとしてる。

僕みたいな子孫はいなかった。

何でリアノがそんな勘違いしたのかは謎のままだけど。

「赤月は僕が誰だか探しに逝ってくれた。

赤月は、良い人だった。

また逢えたら償いたい。」

アスファルトの冷たさにそのまま溶け込み、僕は眠りについた。