彼の鎌から金属音混じりの低い、男声が響く。
少年……鎖の破片は、対称的な少女声で呪文を唱える。
其の様は謳っているかの様。
『疾風の肩書きを纏いし探求者よ。
王なる器を捧げし勇者よ。
天地を結ぶ愛子の如し、芽生える大樹を焼き払え。
リェッタ・レイン』
バチャ
此の音を何と例えようか。
だが誰しも聞いた事は有る……言うなれば、まるで水たまりに足を踏み入れた時の音。
鎖の破片の鎌は音の主の雨水に濡れる。
綺麗な透き通った水晶体と成った鎌は、水しぶきをあげながら私のエルナド・ヴァイラを消し去った。
『赦雨薇唖、果てまで逝こう。』
鎌を私に向け、鎖の破片は笑った。
彼の喉から微かに漏れた笑い声を私は聞き逃さなかった。
其の瞬間、私はふっきれた。
本気で向かわなきゃ、絶対死ぬって。
『解らない。 何で貴女は爾来を好いているのか。』
水晶の鎌は向かって来る。
半透明な其れの内側からは殺気立った鎖の破片の顔が見えた。
私を睨んでるのか、哀れんでるのか。
上手く読み取れない、何とでも言える表情をしてた。
でも私は、何となく、何となくだけど彼は私に呆れている様に思えた。
どう思われようが別に良い。
其の質問の答えはどんな問題よりも簡単で、簡潔に答えられる物だから。
『だって、爾来様くらい優しい人は、此の世界中探したっていないから!』
私の瞳孔に今にでも突き刺さりそうな鎌の先端。
抵抗して反撃しなければならないだろうに、どっと胸に突き刺さってくる恐怖に、私の神経は麻痺した。
今の一分一秒で私は直行で死に向かっている。
筈なのに、辺りの空気は冷やかなまま。
動かない風景。
ポタリ
水晶体の鎌が、氷の様に溶けていく。
落ちた雫は床に馴染む。
『……何故だ、何故だ? 何故、解らない……
わから……ナイ? わかって……イナイのは、ボク?』
パリ
卵が割れるみたいな音がした。
少年……鎖の破片は、対称的な少女声で呪文を唱える。
其の様は謳っているかの様。
『疾風の肩書きを纏いし探求者よ。
王なる器を捧げし勇者よ。
天地を結ぶ愛子の如し、芽生える大樹を焼き払え。
リェッタ・レイン』
バチャ
此の音を何と例えようか。
だが誰しも聞いた事は有る……言うなれば、まるで水たまりに足を踏み入れた時の音。
鎖の破片の鎌は音の主の雨水に濡れる。
綺麗な透き通った水晶体と成った鎌は、水しぶきをあげながら私のエルナド・ヴァイラを消し去った。
『赦雨薇唖、果てまで逝こう。』
鎌を私に向け、鎖の破片は笑った。
彼の喉から微かに漏れた笑い声を私は聞き逃さなかった。
其の瞬間、私はふっきれた。
本気で向かわなきゃ、絶対死ぬって。
『解らない。 何で貴女は爾来を好いているのか。』
水晶の鎌は向かって来る。
半透明な其れの内側からは殺気立った鎖の破片の顔が見えた。
私を睨んでるのか、哀れんでるのか。
上手く読み取れない、何とでも言える表情をしてた。
でも私は、何となく、何となくだけど彼は私に呆れている様に思えた。
どう思われようが別に良い。
其の質問の答えはどんな問題よりも簡単で、簡潔に答えられる物だから。
『だって、爾来様くらい優しい人は、此の世界中探したっていないから!』
私の瞳孔に今にでも突き刺さりそうな鎌の先端。
抵抗して反撃しなければならないだろうに、どっと胸に突き刺さってくる恐怖に、私の神経は麻痺した。
今の一分一秒で私は直行で死に向かっている。
筈なのに、辺りの空気は冷やかなまま。
動かない風景。
ポタリ
水晶体の鎌が、氷の様に溶けていく。
落ちた雫は床に馴染む。
『……何故だ、何故だ? 何故、解らない……
わから……ナイ? わかって……イナイのは、ボク?』
パリ
卵が割れるみたいな音がした。


