“愚カナ゛人間よ゛。

ワ゛シは゛下級悪魔等では゛無い。

上級悪魔ヴェルディ。

聞い゛タ事ハアるであ゛ろう?”

泡を吹きながら、悪魔は汚らわしい声を出す。

上級悪魔・ヴェルディ。

確かにキャルナスは聞いた事があった。

鏡界の神話に出て来る悪魔だ。

昔、天と地――――天界と悪界の戦乱があった。

その時に悪界を率いていたのが、上級悪魔・ヴェルディ。

「聞いた事は有ります。

でも貴方は天地戦争で、仲間の悪魔・ジエルドに殺された筈だ。」

少し不安は有ったんだ。

神授の森に湧き上がっている、嫌な悪気。

何かが渦巻いている。

だが、次第にこの森が何処だか解った……いや、解ってしまったんだ。

天魚のいる湖。

此処は……

「天地戦争の舞台となった……神天地・アリアード。

本来なら神界に在る筈の地……」


神界。


民達には話だけしか伝わって無い。

本当に在るかも解らない地。

神と魔王、そして支配者のみが足を踏み入れられる地。

其処に昔、悪魔が攻め込もうと目論んだ。

だが、天使達は悪魔達を迎え討った。

神界には入れないようにしたかったが、悪魔の軍勢には勝てなかった。

圧され続け、遂に神界への扉は悪魔達に討ち取られた。

神界へ進出し続け、当時のNo.1 神灯の元へ向かう。

其処で神灯は支配者の身を案じ、場所を神界から地上に移す事を考えた。

「それが此処……

神授……神から授かった地……。

アリアードを地上にそのまま転換させたんですね。」

キャルナスの話は質の悪いお伽話の様だった。

恐ろしい戦乱だ、普通なら他人事で済む。

だが違う。

その軍勢を率いていた悪魔がいるのだ。

しかも目前に。

「何故死んだ悪魔が……」

美紗は今にでも悪気によって押し潰されそうなを意識を、
何とか支配力で跳ね返しながら白銀界を保つ。

“ワ゛シの子孫゛が、ワシ゛を蘇生させ゛タ。”

ヴェルディの子孫……?

「ミサ!!」

キャルナスの断末魔の叫びが響き渡る!