静まり返るパドック内。

光さんにおめでとう、と言えない雰囲気がチーム内に流れている。

あたし、思わず周りの大人達の様子を伺った。

戻ってきた光さんも、祥太郎も笑顔はない。

張り詰めた緊張感だけがそこにはある。



メディアが二人にインタビューに来たのは表彰式が終わってから。

その時、ようやく二人は顔を見合わせて笑った。

表彰式でも二人とも、ニコリともしないからパパは

「やっぱりどちらかを600にすべきだった」

と言って頭を抱えていたから。

ようやく見せた笑顔にあたしも周りもホッとした。



…最終戦は2週間後。



あたし自身も頑張らなくてはいけない。

拓海くんに追い付くには優勝しかない。



そして光さんも、今度がラストランになる。

出来たら…チャンピオンになって欲しい。

でも、祥太郎も負けて欲しくない。



…うーん、難しい。



あたしはこっそりため息をついた。