女優デビュー

学さんが演技の勉強のことを聞いてきたので、私は気持ちを切り替えた。

「いえ、そういうわけじゃないです。
ただ、私、今まで全然演技の勉強とかしたことなかったので、少しでもうまくなりたくて」

「そっか、演劇部とかでもなかったの?」

「ええ、もともと女優になるつもりもなかったですし」

私がそう答えると、学さんは意外そうな表情になった。

「え、そうなの?
でもオーディション受けたんだよね?」

「ああ、それは……」


私は母が悟君目当てで勝手に応募したことを学さんに話した。


「ククッ……
面白いお袋さんだな」

身内の恥をさらした私は身を縮めた。

学さんはひとしきり笑うと、話を戻した。

「でも、それなら、なんで今になって演技の勉強しようと思ったの?」

「それは……」