ひえええっ! 奏真君にキ、キスされちゃったぁ!! おでこだけど。 でも、 でも、あの、奏真君にだよ! ファンの人に知られたら大変なことになりそう。 私は慌てて玄関を開けて家に入った。 「ただいまー」 できるだけ平静を保って家の中に声をかける。 「おかえりー」 奥からのんびりした母の声が返ってきた。 いつもと変わらないその声に、ほっとする。 なんとなく後ろめたかった気分が少し軽くなった気がした。