女優デビュー

「そんな人気女優になんてならないよ……」


私が首を振ると、学さんは私の両手を取った。


「いや、俺の目に狂いはない。
千夏はさ、すごく負けず嫌いだろ?」


「ああ、うん、そうかも」


「最初は女優になんて興味ないって言ってたじゃないか。
それなのに、いざ撮影が始まったら、自分から演技の勉強始めて、みるみる上達した」


「それは、悟君とか学さんとかが親切に教えてくれたからだよ」


「いや、それだけじゃない。
「一緒に働いてて、さまざまな場面で千夏が発言したり行動したりするのを見てて、女優に向いてるなって思った」


「そう、なの?」


私は半信半疑で首をかしげた。


「基本的に前向きだしな。
自分の経験したことのないシチュエーションでもすごく想像力豊かに柔軟に反応するし」


自分では自分の性格なんていまいちよくわかない。


だからあいまいに頷いて学さんの話を聞いた。