女優デビュー

「あ、あの、こっちだけでいいよ。
ダイヤは、まだ、早いと思う」


私がそう言うと、学さんは首を振った。


「だめ。
これは千夏のだから」


そう言って、指輪を箱から出し、裏の文字を見せてくれた。


"MANABU to CHINATSU"


そこにはそう文字が刻まれていた。


「うそ……」


「前に言ったろ?
千夏が欲しいって。
抱きたいって意味ももちろんあるけど、俺だけのものにしたいって気持ちで言ったんだ。
だから、受け取って欲しい」


「え……、そんな……」


「もうすぐ、ドラマの放送が始まる。
きっと千夏はすごい人気女優になる。
その前に、俺が独り占めしたい」


学さんは指輪をしまいながら、ニヤリと笑ってそう言った。