女優デビュー

しかし。


自分の家に送り届けてくれるものとばかり思っていた私は、着いた場所に気づき、戸惑った。



「どうぞ」


初めて入る学さんの部屋。


シンプルモダンって感じ?


白と黒と、明るいグリーンで統一されたリビング。


私は学さんに勧められるまま、ソファに腰を下ろした。


「早めに帰れたから、ちょうどいい時間になった」


そう言って、学さんは寝室と思われる部屋から、リボンのついた小さな箱を持ってきた。


そして私の右に座りながら、言った。


「千夏は16時48分に生まれたんだってね」


「え?」


「この間、お袋さんが言ってたじゃん。
聞いてなかった?」


私はコクリと頷いた。


「ほら、見て」


指差された先には、デジタル時計があった。