女優デビュー

そう言うと、学さんは私の方に顔を向けて微笑んだ。


あきれているような、少し後悔しているような、そんな微笑みだった。


ふと視線を下げると、ハンドルに乗せた学さんの手が震えていた。


私は思わず、その腕に手を伸ばした。


でも、


「やめろ」


手が触れる前に学さんに止められた。


「え?」


「今、俺に触れるな。
これでも必死に自制してるんだ!」


怒鳴るように言われ、ビクッと手を引っこめた。