でも、奏真君はさして気にする風もなく私を見て言った。

「ああ、じゃあ、電話しとけば?
関係者と食事して帰るから、少し遅くなるって」

うひゃあ、やっぱり奏真君、強引。


でも、なんか、ちょっと期待しちゃう自分もいたりして。


私は素直に頷いて、母に遅くなると電話した。


何も疑うことなく「わかった」と答えた母にちょっと後ろめたい気もしたけど、

でも奏真君と食事なんて。

こんなチャンス、きっと今日を逃したら二度とないよね。


電話を切るころには私の心の中は期待でいっぱいだった。



奏真君が連れてきてくれたのは、テレビ局からさほど遠くない場所にあるイタリアンだった。


車を降りて奏真君についていくと、個室に案内された。

なるほど、これなら顔バレしないわけだ。


オーダーを済ませると、差し向かいに座った奏真君は肘をついた手の上に顔を乗せて、私を見つめてきた。