女優デビュー

「私、知らなかったんです。
私の母がケータイ小説家のリィラだったなんて。
社長や石田さんは知ってたみたいですけど、私は母にも知らされていなくて。
本当に知らなかったんです、信じてください」

『そっか、わかった』

「信じてくれますか？」

『ああ、千夏ちゃんがそう言うんなら信じるよ』

「みんな、私に嘘ついてたんです。
私、悔しくて。
なんで大人はみんな嘘つくの？
嘘ついちゃいけないって子どもには言うくせに。
ずるいよ」


私は学さんが信じてくれたことにほっとして、思わず愚痴をこぼした。

すると、電話の向こうで学さんが困っている気配が伝わってきた。


『千夏ちゃん、俺は嘘ついたかい？』

「え？」

『俺も大人だけど、千夏ちゃんの知ってる俺は嘘つきか？』

「え、学さんは……そんなことないけど」

『だろ？俺は千夏ちゃんに嘘はつかない。
だから、居場所を教えてくれよ』