女優デビュー

「ええ、リィラはあなたのお母さんのペンネームよ。
嘘だと思ったら、帰ってお母さんに確認したらいいわ」


私は騙されてたんだ。

社長と石田さんとお母さんと、大人達によってたかって踊らされて。

悔しい。

でも、ここでわめいたり泣き出したりしたら負けだ。

私は負けない!

私は深呼吸した。

スー、ハー、スー、ハー


私は頭に上っていた血がすーっと引いていき、冷静になっていくのを感じた。


「それを公表するつもりなんですか?」


私は社長に尋ねた。


「ええ」

社長は婉然と微笑んでいる。


「母も了承済みなんですか?」


重ねて聞くと、社長は一瞬視線を泳がせた。


「いえ、それはこれから相談しようと思ってたところよ」


嘘だ。

社長の表情を見ていて、母の了承を得るつもりなんてさらさらなかったのがわかった。

この人は嘘つきだ。