しかし、相手の顔を確認できる距離に近づく前に、その人物は楽屋の前から立ち去ってしまった。


「ストーカー?気持ち悪い」

私がつぶやくと、学さんが言った。

「いや、あれは確か……」


私は学さんを見上げて聞いた。

「お知り合いですか?」


ところが、学さんの口から出てきたのは意外な答えだった。


「いや、写真週刊誌の記者だよ」


「ええ?ああいう人って楽屋の盗み聞きまでするんですか?
っていうかここまで入って来られるの?
セキュリティ結構しっかりしてると思ってたのに」

私が文句を言うと、学さんも厳しい表情で答えた。

「俺からテレビ局の人に言っておくよ。
楽屋にいなくて幸いだったね。
でもこれからは楽屋で話す内容にも気をつけた方がいい」