女優デビュー

「君は自分で演技の勉強を始めただろ?
女優としての訓練を自ら始めた。
石田さんも山本社長もきっと驚いたと思うよ。
お飾りにしか考えていなかった人形が勝手に動き出したんだから」


「お飾り」、「人形」、って言葉がまた胸に刺さったけど、でもそのとおりなんだろうな。


「それで、『計算違い』でしたね?って石田さんに嫌味を言ったワケ。
勝手に動き出した人形の後を追っかけて歩かなくちゃならなくなってさぞかし大変でしょうねってさ」


「はあ……」


私はもうあまりにもショックでちゃんとした返事もできなかった。


そっか。


私、事務所に何にも期待されてなかったんだ。


このドラマが終わったらポイって捨てられちゃう運命なんだ。


女優、これからも当然続けられると思ってたんだけどな……


なんだ、それなら、セリフの練習とか、全然意味ないじゃん。


私、何やってたんだろ……