ドキン!
盗み聞きがばれたかと、私の心臓は跳びはねた。
驚いて振り返ろうとしたけれど強い力で押さえつけられてそれはかなわなかった。
そのまま引きずられて奏真君の楽屋の前から十分に離れると、やっと背後の人は私を解放してくれた。
慌てて振り返り、相手を見ると、
「学さん!」
いつになく真面目な表情の学さんがいた。
「な、なんですか!?
急に羽交い絞めにするなんて、痴漢かと思ったじゃないですか!」
私は精一杯虚勢を張って、そう言った。
しかし、学さんは片方の眉をくいっと上げただけで、囁いた。
「でもおかげで、危うく悲鳴を上げずに済んだろ?
盗み聞きがばれたら、いろいろまずいんじゃないか?」


