女優デビュー

「うるせー!
俺に指図してんじゃねえよ!」


奏真君の声だ。

誰に怒ってるんだろ?

私は聞き耳を立てた。


「でも、もう千夏ちゃんにちょっかい出すのはやめなよ。
彼女、学さんとは別に何でもないみたいじゃん」


淳君の声だ。

でも、何を言い争ってるんだろ?

私と学さんも関係あること?

奏真君の怒鳴り声は続いた。


「おまえにカンケーねえだろ!」

「でもっ!」

「そろそろ千夏がくんだよ。
おまえはさっさと帰れ!」


「……そんなことしたって」

「んだよ!」

「そんなことしたって、学さんはノーマルから変わんないよ!」

「んだとっ!」


「もう僕だって限界だよ!
奏真君を本当に想ってるのは僕だけなんだから!
僕だけでいいじゃないか!
もう振り向かない人を追いかけるのはやめてよ!」