女優デビュー

すべてを聞き終わると、ナッキーさんは「ふうん」と虚空を見つめ、改めて私の顔を見た。


じっと見つめられ、居心地が悪くなった私は先に口を開いた。


「なんですか?
何か言いたいことでもあるんですか?」

ナッキーさんは、またついと目をそらし、自分の手元に視線を落とした。


「千夏ちゃんはさ、まだ、奏真君に恋しちゃったわけじゃないのね?」

「え、それはまあ、そうだと思います……」


私がそう言うと、ナッキーさんはいつになく真面目な顔で私を見た。


「あのさ」

「はい」

私もつられて居住まいを正した。

すると、ナッキーさんは意外なことを言い出した。

「奏真君はやめておいた方がいいよ」