「修ちゃん!」


校舎に背中を向けていた修ちゃんの後ろ姿に声をかけた。


「千鶴」


振り返ると、私を……というか、知ってる顔を見つけたせいか少しほっとした表情を見せる。


やっぱり、居心地悪かったんだ……。


「どうしたの? 誰か待ってるの?」

「この学校に知り合いなんて、千鶴と智明しかいないし」


私が声をかけても、やっぱり注目されていることには変わらない。


「千鶴たちが通ってる学校、見たくなって」


”彼女かな?”とか”あの人カッコイイね!”とか……。


私まで居心地が悪くなってきた。


「いきなりどうしたの? ……っていうか、わざわざ?」

「悪い虫がつかないように?」


そう言って笑う修ちゃん。


悪い虫って……パパみたいなことを言ってるし。


「智明が見たら、焦るかもしれないしね」

「……ないってば」

「もう帰れる?」

「あ、うん」

「じゃ、帰ろう。視線がキツイ」


そう言って修ちゃんは苦笑いを浮かべた。



──本当にトモが見ていたなんて、私は気づかなかった。