「おはよー……」
返事がないのはわかっていながらも、習慣でつい言ってしまう。
美佳ちゃんがいないから、朝食を作るためにいつもより早く椎名家にやって来た。
鍵は昨日……っていうかさっき、一度家に帰る時にトモから預かったものだ。
“どうせ寝てるから勝手に入って来い”って言葉と一緒に。
そっとトモの部屋のドアを開けてみると、こちらに背中を向けて眠っている姿が見えた。
トモ……。
昨日のことをつい思い出してしまって、顔が熱くなってくる。
「……ご飯、作らなきゃ」
誰に言うわけでもないのにわざと声に出してからキッチンに向かった。
コーヒーメーカーをセットして、ウィンナーと目玉焼きを焼く。
パンをトースターに入れた時、玄関のドアが開く音がした。
「おはよう」
修ちゃんだ。
「おはよー」
ソファにカバンを置くと、いつもの席に座った。
「コーヒー出来てるけど、飲む?」
「ん、お願い」
修ちゃんは新聞を広げている。
──お父さんみたい。

