トモは少し心配そうに、だけど、さっきの女の子に向けたような笑顔を浮かべて私の頬を撫でた。


「……夢……そっか……」

夢だったんだ……。


「大丈夫か?」

「ん……」

「お前、着替えたほうがいいよ。結構汗かいてるみたいだし」


そう言われておでこに手を当てると、さっきの夢のせいもあるのか、前髪がぺったりと張り付いていた。


「何か食えそう? 飯、作ってもらおうか?」

「あ……朝、美佳ちゃんがおかゆ作ってくれた……」

「そっか。じゃ、それあっためてくるから、その間に着替えとけよ」


安心したように微笑むと、トモは部屋を出ようと立ち上がった。


「……!」


その後ろ姿とさっきの背中が急にダブって見えて、慌てて体を起こしてシャツの裾を掴んだ。



「どうした?」

「……行かないでっ……」


「千鶴?」

振り返ったトモは驚いたように目を丸くしていた。



「もうちょっと……まだ、傍にいて……」

今、手を離したら、トモが戻ってこないような気がした。


そんなわけ、ないのにね……。