「……どういう意味だよ」

無意識に声が低くなる。


そこで修平が振り返った。


「そのままの意味だよ。抱きしめたくなるし、押し倒したくなる」


どこかからかうような口ぶりだけど、その目は真剣だった。



「……お前さぁ、この際だから聞くけど。……千鶴のこと、どう思ってんの?」


拳を握りしめ、ドアに背中を預け、今度は俺が修平を見下ろした。


千鶴と修平のそんな場面を想像しただけで、目の前にいる修平を殴ってしまいそうだ。





「好きだよ、今でも」

「……っ」


真っ直ぐ、迷いなく答える修平。


「男がその気になれば、千鶴くらい簡単に押し倒せるってことだよ」

「お前っ……!」

「千鶴は俺に気を許し過ぎてる所があるから」


立ち上がった修平は、俺の肩にぽん、と手を置いてそのまま横に押した。


強い力でもなかったはずなのに足に力が入っていなかったのか、そのままよろけるように道を空けてしまった俺を横目に、



「気をつけた方がいいよ」

と、意味ありげに唇の端を持ち上げて笑った修平は、部屋を出ていった。