もう家に帰りたい…

お水が飲みたい…

ゆかたの帯を
ゆるめたい…

部屋で
ゆっくり眠りたい…

「私のどこが好き？」
などと質問すると話がややこしくなる。急がないと私は倒れる。

はやく自由になりたい…
自由になるには、こう言うしかなかった。

「こちらこそ
　よろしく
　お願いします」

あなたの望みどおり、おつき合いします…だから今夜は帰らせてください…私は倒れそうです

王子は笑顔で言う。
「僕たち、これで正式に付き合うことになったんだから……」

「ダッ……！」
ダメです、王子！

きっと王子は
『恋人たちの誓い』をせまるつもりだ！

「僕たち、これで正式に付き合うことになったんだから、記念に 『キスの儀式』をしようよ」
なんて言いだすに違いない！

たしかに、おつき合いすることになりました。でも、いきなり『キスの儀式』はダメです王子！

ただでさえ倒れそうなのに、キスで口をふさがれたら息ができずに私は死ぬ。ほんとに死んでしまう。

いけません王子！ 今夜はこれで終わりにしてください。

キスの儀式は…
キスの儀式だけは…
お許しをーーーー！

王子、王子、
王子いいいいいいいいいいいいいいいいーーー！

私は家に帰りたい！
今夜は帰らせてー！

キスの儀式はダメです
キスの儀式だけはーー

やめてええええええ！
　えええええええ！
　　えええええ！
　　　えええ！
　　　　え！

　　　　え！

　　　　え！

　　　　え！

「ねえ、聞いてる？」


　　　　え？

　　　　え？

　　…なに？