黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~

「どういう意味?」

「余計な講義や意見など必要無い。傭兵には傭兵のやり方がある。お前がやってきた事とは異なる場合が多い」

「ああ、そんなコト。了解したわ」

 軽く応えると、ノインも自分のハンドガンの手入れを始めた。

 そんなノインに、ベリルは溜息を漏らす。

 口で言うのとは違う。彼女は完全には理解していないだろう。

 ベリルにとって、ノインは敵に相当する。もちろん、軍に入る前の彼女の事だ。

 ベリルは人を救う側の人間──一方ノインは、人を殺す側の人間だった。

 ノインが組織にいた時に出会っていたなら、ベリルは躊躇無く彼女を殺していたかもしれない。

 一時は軍にいたとはいえ、幼い頃に染みついた殺しの技術と快感は、そう簡単に抜けるモノじゃない。

 ベリルはエメラルドの瞳を曇らせた。